リニア補聴器・ノンリニア補聴器

リニア補聴器・ノンリニア補聴器

こんにちは、メガネの金剛補聴器担当 大橋です。

前回は番外編ということで金剛店リニューアルをお伝えしましたが、記事の方を再開です。

 

何回か補聴器の効果について書いてきましたが、

今回からは補聴器の効果を最大限出す為の機能について書いていこうと思います。

 

補聴器のまず第一の機能としては、聞きたい音を大きく聞こえるようにすることです。

オージオグラムや閾値のことを今までお伝えしてきましたが、人は自身の閾値以下の音を聞き取ることは出来ません。

聴力レベルが下がっている場合には、補聴器をつけて閾値以上の音量に調整して聞くことが必要です。

目安として閾値上30dB以上の大きさの音が聴取出来れば

言葉の聞き取りが出来ると言われています。

もし閾値が40dBの人がいた場合、70dBの音で聞こえてくると言葉の聞き取りがしやすくなるということです。

実際は先述もした通り、明瞭度も関わってきますので単純な話ではありません。

簡単に言いますと、閾値付近の音は聞こえるか聞こえないか、小さすぎてわかりづらいので

閾値から+30dBくらいの音で聞こえた方が聞きやすいということです。

さらに簡単に考えると、聞こえづらい場合は補聴器で+30dBの音量で聞こえるようにしてあげればいいというわけです。

 

ただ、これだとあまりにも乱暴な考え方なので、補聴器には音を調整する為の機能が色々付いています。

補聴器にはリニア補聴器ノンリニア補聴器というものがあります。

最近のデジタル補聴器のほとんどがノンリニア補聴器です。

以前のアナログ補聴器時代のものはリニア補聴器が主流でした。

補聴器の場合のリニアという単語は、意味的には「比例」といった意味合いで使われています。

例えば補聴器は入ってきた音(入力音)をどれだけの音で出す(出力音)かを設定します。

ちなみに出力音と入力音の差が利得ということになります。

利得を30dBと設定した場合、リニア補聴器の場合は基本的に

どの入力音に対しても30dBの利得で出力音を出すことになります。

 

40dBの音が補聴器に入ってきたら、70dBで出力。

50dBの場合は80dB、

60dBの場合は90dB、

70dBの場合は100dB、

80dBの場合は110dB・・・

といったように、入力音が大きくなるにつれ、それに比例するように出力音を大きくします。

これがリニア補聴器ということです。

 

少し脱線しますが、人には「ダイナミックレンジ」というものがあります。

簡単に言うとその人が聞こえる聴力レベルの幅です。

健聴者のダイナミックレンジの例

不快閾値(uncomfortable loudness level = UCL)という、これ以上大きな音を聞くことが不快と感じるレベルもあり、閾値から不快閾値までがダイナミックレンジとなります。

ちなみに閾値とは最小可聴閾値のことで聞き取れる最も小さい音のことです。

一般的に不快閾値は100dBくらいです。

人によって異なりますが、おおよそ健聴者の場合のダイナミックレンジは0~100dBとなっています。

不快閾値を超えるような音量はうるさくて聞いていられないとなってしまうので、

補聴器で音を大きくする時には、これを超えないようにすることが必要です。

 

上記の例だと80dBの入力音の場合は、出力音が110dBとなり

不快閾値を超えている可能性があります。

さらに難聴になってしまった耳には補充現象というものが起こっている可能性もあり、

大きな音がより一層うるさく聞こえている可能性もあります。

補充現象(リクルートメント現象)については今回は省略です。

話戻って、リニア補聴器の場合は大きな入力音の場合でも

小さい音と同じだけ大きくしてしまうので、うるさすぎる場合があります。

最大出力の制限装置というものもあり、例えば最大出力を100dBと設定した場合、

100dBを超える出力音は制限されて出力されることになります。

古い補聴器の中には最大出力を超える音はカットして制限するようなものもあり、

音質の劣化を招く原因にもなっていました。

リニア補聴器は音を大きくすることは得意な補聴器でしっかりとした音量感を得られるものでしたが、

細かい音質の調整などは難しい補聴器というわけです。

 

わかりにくいですが、ひとつ例を。

こちらの画像は補聴器の入力音と出力音を表す特性図というものです。

横軸が入力音の大きさ、縦軸が出力音の大きさです。

補聴器はまずある程度の小さな音は一定の音量で大きくします。

この図の場合は入力音40dBまでは調整者側でも操作できない一定の部分になっています。

40dB以上がリニア特性の増幅になっていて、利得は10dBに設定してあります。

50dB入力音の場合は60dBで出力、

60dB入力音の場合は70dBで出力、

70dB入力音の場合は80dBで出力、

100dB入力音の場合は110dBで出力、

と入力音がどれだけ大きくなっても10dB足されて出力されているのがわかります。

最大出力は110dBに設定してあるので110dBを超える出力音からは

制限がかかり、リニアの特性ではなくなっています。

 

 

さらにもうひとつノンリニア補聴器の例を。

ノンリニア補聴器の特徴としては、出力音に圧縮をかけて音量を調整します。

何を言っているのかさっぱりだと思いますので、例をもとにお伝えします。

上記特性図のノンリニア補聴器の場合、2.0という圧縮比で圧縮をかけています。

圧縮とは入力音の増加に対する、出力音の増加量を比例による一定ではなく、

圧縮比に基づき制限するものとなっています。

圧縮をかける場合は圧縮を掛け始めるニーポイントというものがありまして、

今回の場合は50dBの入力音がニーポイントとなっています。

つまり入力音50dBまでの出力がリニアで、

50dB以上の入力音からノンリニアの特性になる。

これがノンリニア補聴器の簡単な例です。

 

言い換えると、小さな音はなるべく早くリニア調整で音を大きくし、

うるさく感じやすい大きな音はノンリニア調整でゆっくり大きくする、

ということになります

圧縮比=CRCとも表現しますが、その比率がどれだけ圧縮を掛けるかを表します。

今回の特性図はニーポイントが50dB、ここから圧縮が掛かり始めます。

CRCは2.0なので、70dB入力音の場合、出力音は70dBになっています。

90dB入力音の場合、出力音は80dBになっています。

はい、また何のことかさっぱりわかりませんね。

ちなみに上記2つの特性図はCRC1.0の場合と2.0の場合を比較しています。

CRC1.0とは、圧縮比1.0、圧縮はしないリニアということです。

リニアの場合は利得を10dBと設定し入力音が10dB上がると

出力音もそれに比例して10dBずつ上がっていました。

ノンリニア補聴器の場合はニーポイントから圧縮を掛け始めるので

CRCが2.0で、入力音が50dBから70dBに上がった場合、

入力音と出力音の比率はつまり2:1。

入力音が20dB上がっても、出力音は10dBしか上げないということになります。

さらに入力音を20dB上げた90dB入力音の場合は

合計20dBの利得ということになるので、出力音は80dBということになります。

この特性図だとリニアのときのように最大出力まで達していないので

図の端までノンリニアの調整となっています。

これがデジタル補聴器の大きな特徴のひとつです。

 

リニア補聴器の場合、ダイナミックレンジ内に聞きたい音を収めることが難しかったのですが、

ノンリニア補聴器になったことにより、出力音に圧縮を掛けダイナミックレンジ内に収めやすくなりました。

圧縮は音を加工しているわけなので圧縮を掛ければ掛けるほど音質の劣化を招きます。

音をしっかり聞く為にはダイナミックレンジ内に入らないといけない、

音質が悪く聞き取れないと意味がない、と難しい問題も出てきます。

ただ昔の補聴器のように補聴器をつけたらうるさい、

そんな問題はノンリニア補聴器の方が解決しやすくなっていると言えると思います。

補聴器の機能やまだまだたくさんありますが、まずは基本の音を大きくすることをお伝えしました。